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診断書様式120号の4
精神の障害は、多種であり、かつ、その症状は同一原因であっても多様です。したがって、認定に当たっては具体的な日常生活状況等の困難を判断するとともに、その原因及び経過を考慮します。
精神の障害は「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」、「気分(感情)障害」、「症状性を含む器質性精神障害」、「てんかん」、「知的障害」、「発達障害」に区分します。
症状性を含む器質性精神障害、てんかんであって、妄想、厳格等のあるものについては、「A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害」に準じて取り扱います。
A 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害並びに気分(感情)障害
(1)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次の通りです。
1級 | 1.統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態または高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の以上体験が著明なため、常時の援助が必要なもの 2.気分(感情障害)によるものであっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これを持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の介護が必要なもの |
2級 | 1.統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の以上体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの 2.気分(感情障害)によるものであっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これを持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの |
3級 | 1.統合失調症によるものにあっては、残遺状態または病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の以上体験があり、労働が制限を受けるもの 2.気分(感情障害)によるものであっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくはないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの |
(2)統合失調症、統合失調症型障害および妄想障害並びに気分(感情)障害の認定にあたっては、次の点を考慮の上慎重に行います。
ア 統合失調症は、予後不良の場合もあり、国年令別表・厚年令別表第1に定める障害の状態に該当すると認められるものが多い。しかし、罹病後数年ないし十数年の経過中に症状の好転を見ることもあり、また、その反面急激に憎悪し、その状態を持続することもあります。したがって、統合失調症として認定を行うものに対しては、発病時からの療養および症状の経過を十分考慮します。
イ 気分(感情)障害は、本来、症状の著明な時期と症状の消失する時期を繰り返すものです。したがって、現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過及びそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮します。
また、統合失調症等とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。
(3)日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するよう努めます。また、現に仕事に従事している人については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものととらえず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
(4)人格障害は、原則として認定の対象となりません。
(5)神経症にあっては、その症状が長時間持続し、一見重症なものであっても、原則として、認定の対象となりません。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱います。
なお、認定にあたっては、精神病の病態がICD-10による病態区分のどの区分に属するかを考慮して判断すること。
B 症状性を含む器質性精神障害
(1)症状性を含む器質性精神障害(高次機能障害を含む)とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものです。
なお、アルコール、薬物等の精神作用物質の使用による精神および行動の障害(以下「作用物質使用による精神障害という)についてもこの項に含めます。
また、症状性を含む器質性精神障害とその他認定の対象となる精神疾患が、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。
(2)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次の通りです。
1級 | 高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症が著明なため、常時の援助が必要なもの |
2級 | 認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が著しい制限を受けるもの |
3級 | 1.認知障害、人格変化は著しくはないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの 2.認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの |
障 害 手当金 | 認知障害のため、労働が制限を受けるもの |
(3)脳の器質障害については、精神障害と神経障害を区分して考えることは、その多岐にわたる臨床症状から不能であり、原則としてそれらの諸症状を総合して、全体像から総合的に判断して認定します。
(4)精神作用物質使用による精神障害
ア アルコール、薬物等の精神作用物質の使用により生じる精神障害について認定するものであって、精神病性障害を示さない急性中毒及び明らかな身体依存の見られないものは、認定の対象となりません。
イ 精神作用物質使用による精神障害は、その原因に留意し、発病時からの療養及び症状の経過を十分考慮します。
(5)高次機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、日常生活または社会生活に制約がある障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがあります。
なお、障害の状態は、代償機能やリハビリテーションにより好転も見られることから療養及び症状や経過を十分考慮します。
また、失語の障害については、「音声または言語機能の障害」の認定要領により認定します。
(6)日常生活能力等の判定にあっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するように努めます。また、現に仕事に従事している人については、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものととらえず、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。
C てんかん
(1)てんかん発作は、部分発作、全般発作、未分類てんかん発作などに分類されますが、具体的に出現する臨床症状は多彩です。
また、発作頻度に関しても、薬物療法によって完全に消失するものから、難治性てんかんと呼ばれる発作を抑制できないものまで様々です。
さらに、てんかん発作は、その重症度や発作頻度以外に、発作間欠期においても、それに起因する様々な程度の精神神経症や認知障害などが、稀ならず出現することに留意する必要があります。
(2)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次の通りです。
1級 | 十分な治療にもかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの |
2級 | 十分な治療にもかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、CまたはDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの |
3級 | 十分な治療にもかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限されるもの |
㊟1 発作のタイプは以下の通り。
A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作
㊟2 てんかんは、発作と精神神経症及び認知障害が相まって出現することに留意。また、精神神経症状及び認知障害については、前記「B 症状性を含む器質性精神障害」に準じて認定すること。
(3)てんかんの認定にあたっては、その発作の重症度(意識障害の有無、生命の危険性や社会生活での危険性の有無など)や発作頻度に加え、発作間欠期の精神神経症状や認知障害の結果、日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという、損減を重視した観点から認定します。
様々なタイプのてんかん発作が出現し、発作間欠期に精神神経症状やにんちには、障害を有する場合治療および病状の経過、日常生活状況等によっては、さらに上位等級に認定します。
また、てんかんとその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定は行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。
(4)てんかん発作については、抗てんかん薬の服用や、外科的治療によって抑制される場合にあっては原則として認定の対象になりません。
D 知的障害
(1)知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)に現れ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいいます。
(2)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次の通りです。
1級 | 知的障害があり、食事や身の回りのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助が必要とするもの |
2級 | 知的障害があり、食事や身の回りのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの |
3級 | 知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの |
(3)知的障害の認定にあたっては、知能指数のみに着眼することなく、日常生活の様々な場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断します。
また、知的障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。
(4)日常生活能力等の判定にあたっては、身体的機能及び精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するように努める。
(5)就労支援施設や小規模作業所などに参加する人に限らず、雇用契約により一般就労をしている人であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している場合、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えません。現に労働に従事している人については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断します。
E 発達障害
(1)発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢に置いて発現するものをいいます。
(2)発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害によって対人関係や意思疎通を円滑に行うことができないため日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行います。
また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)は行わず、諸症状を総合的に判断して認定します。
(3)発達障害は、通常低年齢で発症する疾患ですが、知的障害を伴わない人が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とします。
(4)各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次の通りです。
1級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの |
2級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの |
3級 | 発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの |
(5)就労支援施設や小規模作業所などに参加する人に限らず、雇用契約により一般就労をしている人であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している場合、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えません。現に労働に従事している人については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断します。
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精神疾患の国際的診断基準・分類としてWHO(世界保健機関)が公表しているICD-10コードがあります。これは精神の診断書の「①障害の原因となった傷病名」欄の下に必ず記載されなければいけないコードです。
神経症(F40-F49)が診断書の「①傷病の原因となった傷病名」欄に記載されている場合は、原則として障害年金の対象となりません。
神経症は精神病ほど症状が重くなく、かつ障害年金による生活保障を行うと、積極的に病気を自分で治す意欲を失わせてしまうと考えられていることから、適応障害や社会不安障害などの神経症は障害年金の認定対象とされていません。
ただし、精神病の病態(幻覚、妄想など)を示していれば統合失調症や気分(感情)障害に準じて認定の対象となります。
ICD-10コード | 精神疾患名 |
F00-F09 | 症状性を含む器質性精神障害 |
F10-F19 | 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 |
F20-F29 | 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 |
F30-F39 | 気分(感情)障害 |
F40-F49 | 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害 |
F50-F59 | 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群 |
F60-F69 | 成人の人格及び行動の障害 |
F70-F79 | 知的障害(精神遅滞) |
F80-F89 | 心理的発達の障害 |
F90-F98 | 小児(児童)期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害 |
F99 | 詳細不明の精神障害 |
G40-G47 | 挿間性及び発作性障害 |
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